潜水艦映画『U・ボート』音の恐怖に息を呑む。

映画

(この記事は一部ネタバレを含みますが、ラストのネタバレはありません)

 

映画『U・ボート』

Uボートとは第二次世界大戦中にドイツ軍が造った潜水艦の総称です。潜水艦の代名詞とも言える存在です。そんな数あるUボートの一隻を取り扱ったのが、この作品。

映画『U・ボート』と聞いて、真っ先にメインテーマが脳裏で再生されるという人もいるかもしれません。この映画のメインテーマは結構有名で、作品を知らなくても「聞いたことある」という人も多いでしょう。作中、広大な大西洋をバックにこのメインテーマが流れると気分が高揚します。まさに「英雄」として讃えれた潜水艦乗りにぴったりのテーマなのですが、この作品は彼らの壮絶な体験を描いた作品でもあるのです。

このワードにピンときたらおすすめ
潜水艦 ソナー音 見えない恐怖 極限状態 一難去ってまた一難

 





U・ボート ディレクターズカット版 予告編

テーマ曲

 

作品情報

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作品名
原題
U・ボート
Das Boot
製作年 1981年
製作国 西ドイツ
上映時間 135分
監督 ヴォルフガング・ペーターゼン
主演 ユルゲン・プロホノフ

サクッとあらすじ

  • 第二次世界大戦さなかの1941年。ドイツ潜水艦Uボートの一隻であるU-96は出撃中に敵の攻撃を受けるものの、なんとか耐えしのぐ
  • しかしすぐに、敵の警備が厳重なジブラルタル海峡を通ってイタリアに向かえという命令を受ける
  • やむなくジブラルタル海峡を航行中、敵に発見されてしまう
  • 緊急潜航して敵の目をあざむくも、今度は浮上することができなくなる
  • 乗組員は心身ともに極限状態の中、修理を試みる

Uボートとは

Uボートとは、第二次世界大戦中にドイツが建造した潜水艦の総称です。Uはドイツ語の「Untersee(水面下)」の頭文字だとか。敵の戦艦や空母を撃沈する功績をあげていますが、主に輸送船を攻撃する通商破壊で名を馳せました。

当時のイギリス首相チャーチルをもって「私が戦時中もっとも頭を悩ませたのはUボートである」と言わしめるほどでした。しかし、年を重ねるごとに対潜水艦攻撃技術は向上してゆき、結果的にUボートは高い消耗率を出すことになります。

映画の前置きで「Uボート乗組員4万人のうち、3万人が還ってこなかった」というテロップが流れ、作中の乗組員たちの不穏な未来を暗示させます。

潜水艦の理想と現実

映画が始まるとすぐに、メインテーマが静かに流れ始め、闇の中からUボートがゆらりと現れるとともに、画面に大きくタイトルが表示されます。開始1分で一気に引きこまれてしまう演出です。

そして、出撃前の華やかな宴、出撃時の盛大な見送りのシーン。これから起こる悲劇の対比であることは明らかです。

出撃後、艦内の様子が映しこまれるのですが、とにかく狭さが目立ちます。通路はひとり通るのがやっとで、所狭しと食料や日用品が積んであり、ベッドも二人でひとつしかない。生活環境が劣悪であることがひと目でわかります。潜水艦乗りはとりわけ精神的に強い者のみが選ばれると聞いたことがありますが、こんな中で何週間も航海することになるのだから当然だと思ってしまいました。

艦内の様子はやけにリアルなので、現存している潜水艦を借りて撮影しているのかと思いきや、すべてセットだと知って驚きました。潜航シーンなどは模型を用いていますが、非常に精巧に作られています。模型撮影もCGとは違う趣きがあっていいですね。

音の恐怖に息を呑む

出撃後しばらくして、敵の駆逐艦に見つかったU-96は即座に潜航し、攻撃をやり過ごします(駆逐艦は爆雷と呼ばれる兵器を海面に投下して潜水艦を攻撃します)。

潜水艦は敵にとって見えない恐怖でしょう。しかし、それは潜水艦にとっても同じなのだと思います。潜ってしまうと外の様子をうかがえないため、音で状況を把握せざるを得なくなります。

潜水艦映画お決まりのだんだんと近づいてくるソナー音、浸水してピタピタと水が垂れる音、真上を通過する敵艦のスクリュー音、水圧で軋む艦体。これらの音の演出が艦内の暗い様子と相まって、これでもかというくらい緊張感を引き立てます。息をするのを忘れるほどのスリルです。

一難去ってまた一難

幾多もの攻撃を受け、艦も乗組員もボロボロになりながらも、必死に敵が去るのを待ちます。精神に異常をきたす乗組員が出るものの、息を殺して耐えしのぎ、ようやく海面に浮上します。

ほっとしたのも束の間、U-96はイタリアへ向かえとの命令を受けます。それにはジブラルタル海峡を通らなくてはなりません。ジブラルタル海峡はとても狭く、多数の敵艦が厳重な対潜警戒を敷いて待ち構えていることが予想されました。

以下の画像はヨーロッパ大陸からジブラルタル海峡を見下ろした写真ですが、奥にはうっすらとアフリカ大陸が見えています。海峡の幅はもっとも狭くて14kmほどしかないそうです。ここを満身創痍の艦で通り抜けることがいかに無謀なことかよくわかります。


画像出典:Wikipedia(ジブラルタル海峡)

スペインで補給を受けたU-96はジブラルタル海峡突破のため、闇夜に紛れ、水上をゆっくりと航行するも、敵に見つかってしまいます。

すぐに海中に潜航することで敵の砲撃を避けることはできましたが、ボロボロの船体はすでに限界を迎えており、海中で静止することができなくなっていました。ついには、水深270メートルの海底にぶつかってしまいます。当時の潜水艦の耐えられる潜航深度はせいぜい200~250メートル。270メートルは深度計が振り切れてしまうほどの深さです。傷だらけのU-96はついに水圧に耐え切れず、次々と浸水を起こします。

敵の攻撃、水圧、浸水、故障、酸素不足・・・このような試練が次から次へと休む間もなく押し寄せ、最初は浮かれていた乗組員たちに死の恐怖をまざまざと見せつけます。しかし、艦長の冷静な判断のもと、乗組員たちはあきらめずにひとつひとつ問題を解決していきます。

最後に

観終わった後はなんとも言えない虚無感に包まれることだと思います。ラストの唐突な展開は、個人的にはショッキングでしたが、戦争の無常さを表現しているのかもしれません。

映画『U・ボート』は、潜水艦という逃げられない空間における人間の極限状態を見事に表現した傑作です。潜水艦映画の金字塔として、一見の価値ありです。